それが、大学3年の時、部活に一人の女の子が入ってきた。加藤ローサ似の痩せ型美人。一目ぼれだった。最初は緊張して全く話せなかったが、ある時メアドを交換してからは、毎日のようにメールした。もう、彼女からメール来るのがうれしくてたまらなかった。彼女からメールが来たときは、SMAPのらいおんハートが流れるように設定した。らいおんハートが聞こえると、もう嬉しくて仕方なかった。
それまでの単調なモノクロの毎日から、色が付いた生活が始まって、俺は部活で猛練習。スポ推の筋肉バカ共を倒して奇跡のレギュラー入りを果たした。おしゃれにも気を使うようになり、洋服を買い揃え、香水を使うようになった。(それまで毎日ジャージで生活していた)。ゼミやバイト先の女の子からも、遊びに誘われるようになった。中には、告白してくる女の子までいた(断ったが)。
しかしある日、彼女には部活外で彼氏がいることがわかった。ショックだったが、いつかチャンスがあるだろうと、必死に練習して試合でいいところを見せようと頑張った。
大学4年になって就職活動が始まった。とにかく有名企業に入って、彼女にいいところを見せようと必死に就活した。毎日就活状況を彼女にメールして、「頑張ってください」と返信されるのがうれしかった。そして、日経225の有名企業から数社内定をもらった。その中で、一番名の通った会社に内定を決めて、彼女も喜んでくれた。それだけが生き甲斐だった。
8月、最後の夏の合宿。合宿所に向かう電車の中、偶然彼女と二人きりになった。彼女は彼氏と別れているという情報を得ていた俺は、生まれて初めて自分から女性をデートに誘ってみた。
「あ、あのさ、今度、花火大会あるの、ですが、もしよければ、、一緒に行かない か・・・・」
「え・・・あ、はい。いいですよ」
キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!
もう俺は最高に舞い上がって、その後の合宿では、主将を奇跡的に倒すという快挙を成し遂げてしまった。もう俺に怖いものはない、そう思った。
ただ、世の中はそんなに甘くはなかった。
合宿後、花火大会の件でメールしても反応が悪い。予定した日は全て忙しいと断られた。それで、じゃあ代わりにメシでも・・・と聞いたら、ストレートに「すいません、嫌です」と。そうか、悪かったなとメールしたら、
「先輩だから断りにくかったんです」
と返信がきた。そうか、これまで色々仲良くメールしてくれたのは、俺が部活の「先輩」だったからか。そうか。。。涙が出た。生まれて初めて失恋した。その後の部活は正直よく覚えていない。引退試合も、なんとなく終わってしまった。それから卒業まで彼女とはほとんど話すことはなかった。
4月、社会人生活がスタートして、俺は本社に配属された。忙しいながらも、平凡な毎日だった。
ある日、部活の後輩の一人からメールが届いた。彼女が試合中に大怪我をして、入院したとのこと。暇があれば見舞いに行って欲しいと。行くべきか迷ったが、とにかく心配で仕方なくて、迷惑は承知でアポなしで行ってみた。もし会えなれば、それで仕方ないということで。受付で彼女の部屋の番号を聞いて、部屋の前で看護婦に確認を取り、本人からの了解を得て部屋に入った。
彼女がいた。
少し驚いた顔をされたが、どうでもいい話で1時間くらい時間を潰して、そして病院を後にした。帰宅したとき、携帯から「らいおんハート」の音が聞こえた。彼女からのメールで「ありがとうございました。嬉しかったです。」と。
俺は、やはり彼女のことが好きだ。振られても好きなのだ。いや、デートに断られただけではないか。仕事で実績を作って、色々と彼女に報告したい。そう思って、翌日からバリバリ仕事を始めた。朝一に出勤して、頼まれた仕事は誰よりも早く正確にするようにした。休日は朝から晩まで英語を勉強して、TOEIC900点を超え、同期ではトップになった。それらも彼女にメールしていた。彼女もとても喜んでくれた。
彼女も退院して、就職をする年になった。俺は、TOEICの点数がいいという理由だけで、海外支社に異動することになった。その頃は社内の派遣社員の女性からもデートに誘われたりするようになって、俺は自分に男としての自信を持つようになっていた。
メールで彼女に海外勤務が決まった話と、日本を出る前に、六本木でデートしないかと誘ってみた。
返事は・・・OK!!
これは神様がくれた、最後のチャンスだ!そう思って、だぶついてきた身体をシェイプアップするため、ランニングと筋トレを開始。待ち合わせ場所も行先も全て決めて、服はバーバリーで統一、散髪やら歯医者やら思いつくことはすべてして、デート前日になった。
その夜、らいおんハートの着信音が聞こえた。
「やっぱり、無理になりました、すいません。他の人と行って下さい」
数秒くらい、息ができなかった。そのメールには返信ができなかった。
翌日、俺は約束の時間に、待ち合わせ場所に行ってみた。彼女がもしかしたら来るかもしれないと思ったからだ(当然来なかったが)。それから、大学の体育館へと向かった。そして、最後に彼女が入院していた病院へと行ってみた。
付き合っていたわけではない。しかし、俺にとって、今までで一番濃い思い出は、彼女だった。翌月、俺はオーストラリアへ向かった。
一般的には、俺のような男はバカにしか見えないだろう。しかし、後悔はない。問題は未だに童貞を卒業していないことだ(笑)
彼女にとって俺はなんだったのか。。聞くところによると、彼女は途中で部活を辞めてしまったそうなので、部活のOB・OG会で会うこともないだろう。アドレスも消してしまった。
今でもらいおんハートを聴くと彼女のことを思い出す。彼女がいたから、今の自分があるようなもの。
彼女は、元気にしているかな。
SMAP
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